ゆれる。母と「長いね」なんてラインをやりとりしている間も地震はおさまらず、それどころか次第に大きくなっていった。母からの着信。ロック画面をうまく解除できず手間取る。11年前は実家のリビングにある本棚を押さえようとしながら、買い物に出ていた母に必死で電話をかけたなと思い出す。
電話を繋ぎながら片手で情報を集める。大きな数字と、体に残る嫌な揺れに、ゆっくりと心を砕かれていく。SNS上で繋がっている東北に住む人たちと、以前自分が旅行した東北を思い浮かべて ああ、と思う。ぼんやりとした誰かを思い浮かべて無事でいてほしいと思う。
こちらにいても思い出してしまうのに、向こうにいる人たちは。病床にいる人たちは。
池澤夏樹さんが宮沢賢治の詩を読み解く『言葉の流星群』で自然の無情さ、人への無関心さを書いていた。自然災害は時期も場所も選ばない。わかっていても、なんでわざわざこんな時期にあの場所でまた、と思ってしまう。
母とついでの話をして「とにかく元気で」と言い合って電話を切る。情報や人の声が聞こえやすい環境はありがたくもあり苦しい。誰もが無事でいてほしいと思う。